定期能五月―宝生流―
2019年5月11日(土)※公演終了
第一部は宗家・宝生和英による「鶴亀 曲入」。古の中国。年の始めの儀式が行われ、鶴亀が皇帝の長寿を讃えてめでたく舞います。皇帝も国土の繁栄を祈って自ら舞を舞い、やがて長生殿へと帰って行きます。 脇能(神を主役とする能)に分類される曲ですが主役は神ではなく皇帝と言う現実の人間であること、元になる史実や文芸的な典拠が特に無いなど他とは一味違う演目です。内容は天下泰平、国家の長久を祈念し祝福するという、短い曲ながら見どころが多く楽しい作品です。第二部は武田孝史による「朝長」。源朝長と縁の僧が、都を落ちた朝長が美濃国青墓の宿で自害して果てたと聞き、その地を訪ね朝長の墓参をしているとその宿の女主人がやって来ます。僧が朝長の縁の者だと知ると、自分も朝長に縁がある事と言い、朝長の最期の有様を涙ながらに物語り、僧を我が家に誘いもてなします。その夜僧が朝長を弔っていると、朝長の霊が現われ懺法に感謝します。保元・平治の乱での源氏の悲運を語り、この家の女主人は一夜の宿を貸すだけでなく、自分の死後も丁重に弔ってくれる深い情を喜びます。更に修羅の苦しみや青墓での自害の様を述べ、回向を乞うてやがて消え行きます。狂言は山本東次郎家による「昆布売」と「鬼瓦」を上演、各回冒頭に演目解説があります。
<第一部>
狂言「昆布売」
昆布売:山本則俊
大名:山本則秀
能「鶴亀 曲入」
皇帝:宝生和英
鶴:水上嘉
亀:出雲路啓
臣下:殿田謙吉
臣下:工藤和哉
臣下:坂苗融
官人:山本凜太郎
笛:杉信太朗
小鼓:森澤勇司
大鼓:國川純
太鼓:小寺真佐人
後見:野月聡、小倉伸二郎
地頭:髙橋章
<第二部>
狂言「鬼瓦」
大名:山本東次郎
太郎冠者:山本則秀
能「朝長」
青墓の長者/源朝長:武田孝史
侍女:小倉伸二郎
太刀持:野月聡
旅僧:殿田謙吉
従僧:則久英志
従僧:梅村昌功
長者の下人:山本則重
笛:杉信太朗
小鼓:森澤勇司
大鼓:國川純
太鼓:小寺真佐人
後見:髙橋章、宝生和英、和久荘太郎
地頭:大坪喜美雄
解説:金子直樹(両部とも)