能の魅力を知る
創造する空間-砧-
2023年6月17日(土)
「能の魅力を知る」シリーズ、今回のテーマは「創造する空間」。能楽における作り物(舞台で使用する道具、装置)に焦点を当てます。
六月の能は「砧」。筑前芦屋の何某は訴訟の為に在京が長引き、妻は高楼で打った砧の音が故国まで聞こえたと言う蘇武の故事を思い出し、自分も砧を打ち寂しさを慰めますが、やはり今年も帰れないとの知らせを受け、夫が心変わりしたものと思い病の末に死んでしまいます。やがて帰国した夫は妻の死を知り、回向していると妻の霊が現れ、恋慕の妄執のため地獄に堕ち苦しんでいる事を訴えますが、法華経の功力によって成仏します。狂言は、大名が相撲取りを召し抱えようと太郎冠者に言いつけ、街道で見つけた者(蚊の精)を連れ帰り相撲の勝負をする「蚊相撲」の上演です。
能楽はほぼ舞台装置を用いません。その中で作り物として出される道具も、竹に布を巻いて組み上げたシンプルな形状ですので、観客の想像力で場面や季節を作り出します。なぜこの道具を作り物として出すのか、あるとないとでは演者、観客それぞれの思う物語のイメージがどう変わるのか。演者が「創造」し観る人々が「想像」する公演をお楽しみください。
解説 小田幸子
狂言「蚊相撲」
大名:山本泰太郎
太郎冠者:山本則孝
蚊の精:山本凜太郎
能「砧」
芦屋の某の妻:友枝雄人
夕霧:内田成信
芦屋の某:宝生欣哉
下人:山本泰太郎
笛:一噌隆之
小鼓:成田達志
大鼓:谷口正壽
太鼓:林雄一郎
後見:中村邦生、粟谷浩之
地頭:香川靖嗣